▼ 仮想通貨で話題になったブロックチェーン。一時期はその仮想通貨が投機に使われ価格が乱高下し、マネーロンダリングの問題などの問題も片付いていないため、二年前の熱狂に比べると憑き物が落ちたように静かになっている。ブロックチェーンを含む金融資産は「暗号資産」と名前がつけられ、この名称もまたやや一般の人々から遠いところに行ってしまった印象もあるだろう。
▼ 筆者も詳しくはないが、「価値」は世の中の人がみんな認めるから存在する。そして貨幣の多くの場合が国家の信頼だ。この信頼を国家ではなく、誰も自由に監視することで、改ざんできないようにすれば、それ自体がみんなの認める「価値」になる、それがブロックチェーンの考え方だ。「価値」「価格」は経済学において長年にわたる大きなテーマだが、そこに新しい手法が出てきたことは非常にユニーク。だからこそ、仮想通貨ブームも起こったのだろう。
▼ しかしこの暗号資産、金鉱脈を新たに探せば新しい価値が手に入るように、探し出す、掘り出すことができる。マイニングというやつだ。色々な取引の中から暗号資産に成りうるものを探す、それがマイニング。当然ITの力を使う。仮想通貨ブームの時のマイニングでは、水冷コンピューターを並列で回して、電気代を数万円も使って探した猛者もいるという。逆にいえば、理屈さえ知っていれば自宅で金鉱脈堀りができるのだから、凄い時代になったということか。
▼ ここに一ヶ月ほど前、衝撃的なニュースが飛び込んできた。Googleが実用化は先であろうと思われていた量子コンピューターの実用化にめどを付けたというニュースだ(10/23日付各紙)。後でこれはニューズウイークなどのいくつかのメディアがグーグルのPRに過ぎず、グーグルが解いたという課題も自社のITでは1万年などかからず2日半で解けたという記事も載っている。実際に量子コンピューターが実用化されるのはもう少し先であることは事実だろう。
▼ ただ、その計算力は破壊的だ。通常のスパコンで1万年かかるものを数日でできるという性能を本当だとすれば、ブロックチェーンのマイニングなどはお手の物。それどころか、様々なところで使われている暗号技術の解析がすべて数分できることになる。wi-fiという代物がそのころも残っているかどうかわからないが、すくなくともWP2/PSKのようなwi-fiの暗号は瞬時に解析され、暗号のかかっていないwi-fiとなんら変わらなくなるだろう。となれば、そこのトラフィックに乗っている情報は丸裸だ。
▼ 有線でも同じである。インターネットプロトコルで割り当てられるDNSもあっという間に解析され、そこで使われている仮想VPNのアクセス方法も解析されれば、もはや通信の暗号化自体が意味をなさない。一番安全なのは直接相手に会いに行って伝えるという手段になる。情報の石器時代だ。
▼ もしかすると、もはや手のつけられない神の領域にわれあれは来てしまったのかもしれない、などと考えるのは悲観的過ぎか。