▼ 知見ラボの設立をもって、佐々木の雑感ブログである「風待食堂」を再開することにした。その前のブログは「流通閑話」という名前でもっぱら証券アナリストとして担当していた小売業や流通業の話題を中心にしたものだったが、勤務していた企業が経営譲渡をしたことにより立場も変わったため、自由に物事を書けなくなった。

▼ しばらくは「閑話」という曖昧な隠れブログをしていたのだが、変わりゆく流通業と社会を見る中で、領域を決めない書き物をしたいという気持ちが狂おしいように押し寄せて始めたのが「風待食堂」である。2011年9月1日だから、東日本大震災の半年あととなる。

▼ 「風待食堂」は実在する。北海道の留萌の駅前にある実際の食堂、雑貨店で、高倉健さんと倍賞千恵子さんのゴールデンコンビの名画「駅~station~」のシンボルでもある。「風を待つ」とは、主人公の高倉健さんの故郷である雄冬町に陸路で行くことは出来ず、増毛町まで汽車で行き、そこから連絡船に乗るしかなかった。そしてこの連絡船はしばしば吹雪で欠航する。その時に風がおさまって船が出るのを待つから「風待食堂」。

▼ 道産子の自分にとって、就職で上京したものの、故郷が恋しくなったらレンタルビデオ屋で借りてきて何度も涙を流しながら見た映画が「駅」だ。優秀な同期同僚の中で、自分が明らかに能力的に劣っていることを認めなければならない辛さが、増毛の飲み屋で女将をしながら耐えている倍賞千恵子さんに重なった。そしてこの知見ラボの仲間である竹垣氏、吉岡氏が増毛に行って、地の「国稀」というとびきり旨い、でも当時は無名の酒を飲んで旨かったと言ってくれた時に、いつか自分も風が止んだら好きなことを書くメディアを持とうと「風待食堂」という名前をブログにつけた。

▼ 過去の「流通閑話」「閑話」そして「風待食堂」、さらには一部の顧客にしか公開してこなかった出張記や店舗見学記、決算印象録などもこちらに移行するつもりだ。長い時間がかかるだろうが、お付き合いいただけると嬉しい。そして、同時にこれからは好きなことを書くつもりだ。あらためまして、どうぞよろしく。