▼ 一週間くらい前から米国のファストファッションの「フォーエバー21」が日本の店を閉じると報道されていたのだけど、なんと会社そのものが破綻してチャプター11適応だそうだ。びっくり。以下はロイターのニュース。
【ニューヨーク=中山修志】米カジュアル衣料大手のフォーエバー21は29日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請して経営破綻した。米アマゾン・ドット・コムなどネット通販企業に押されて経営が悪化していた。日本や欧州などの約40カ国から撤退し、規模を縮小して事業を続ける。
同社はカリフォルニア州ロサンゼルスに本社を置き、全米と欧州、アジアなどグローバルで約800店を構えている。郊外の大型商業施設を中心に出店してきたが、ネット通販との競争激化や消費者の嗜好の変化により集客力が低下した。
日本やカナダ、欧州の大部分の地域から撤退し、米国やメキシコなど一部を残して店舗網を縮小する。米国内でも200店近くを閉鎖し、店舗数はほぼ半減する。
日本には婦人衣料の三愛グループと組んで2000年に進出したが、1年あまりで撤退。09年に日本法人を設けて再進出し、東京や大阪などに14店を設けた。日本の全店は10月末で営業を終了する。
▼ 率直なところ、よくぞもったなあというのが私の印象。最初にフォーエバー21を見たのはもう20年くらい前かな、米国の郊外のあちゃこちゃにあるモールで、「あちゃー、こりゃひどい場所を与えられちゃったなあ」というロケーションで商売していたのがここでした。店内に入って商品も見たけど、H&Mでも日本の消費者は納得しないだろうと思っていたのに、さらにその倍くらい酷い。あまりの酷さに写真をとってしまったくらい。後年、同社は在米現地の韓国系若者向けブランドと知った。
▼ ファストファッションとしては英国のH&Mが有名で、流通関係者はオクスフォードサーカスの店に詣でるのが通例になっていたけど、正直なところさほど良い商品ではなかった。聞けば英国ではファッションは一人前の大人が楽しむもので、若者の出る幕ではないそうである。そんな空白市場に上手にマーケットを見つけたのがH&Mだった。商品は戦術のように、粗悪品に近かった(もう20年前の頃だけど)。ニットは伸ばせば伸びっぱなし、デニムは色落ちがする。そんなものでもロンドンの若者は群れをなして買っていた。私にはどう見てもGAPやMANGOなんかのほうが品質が良かったように思うのだが。
▼ H&Mが米国進出したことも、また新しいファストファッションのストーリーを作った。2000年だったと思う。随分と期待されたものだったが、正直なところ、期待はずれというのがラインロビングの印象だった。空間デザインは素晴らしかったけど。そして2008年9月、日本に進出。2004年にGAPがドイツから完全撤退したあとをH&Mが引き受けたという神話も引きずって。
▼ フォーエヴァー21は2000年に一度進出しているが、失敗。我々が知る同店舗は2009年に開店したものだ。H&Mの日本進出の翌年で、国内では既にファーストリテイリングがファストファッションの市場を完全に作り上げていたことは大きい。と同時に、記憶違いかもしれないが、三井不動産がこれらの店舗展開に大きく関わっていたことも成功の要素ではなかったか。銀座のセフォラは1999年からわずか二年で店を閉じたが、ここを用意したのも三井不動産だった。ファストファッションの市場が出来上がっていたこと、新たな欧米ブランドを望んでいたこと、そして大手デベロッパーの三要素が、さほどクオリティの高くないフォーエバー21を予想以上に日本で長生きさせたというのはちょっと意地悪だろうか。
▼ しかしながら…..既にファストファッションのみではなく、アパレル自体が厳しい。ファストファッションは、しまむらの服を自由にアレンジするシマラーや、ハニーズ、アダストリアルなどのファストファッションと定義をするには難しい日本独自のアパレル小売に転化していった。そして今、アパレルは必ずしも消費者の興味を呼ぶものではなくなっている。若者向けのアダストリアがこの下期からアラフォー、アラフィフの服を本格化する。アパレルにとって若いときに取得した顧客の年齢に合わせていくのはリスクを伴う。ブランドの高齢化を招くからだ。しかし、「生産年齢人口が非生産年齢人口よりも少なくなる2025年に向けた動かないわけはいかない」というアダストリアの経営陣の言葉は重い。
▼ そんな中のフォーエバー21。ブーツや先述のセフォラの銀座進出と撤退、今も残るものの100店舗に満たないH&Mの日本における将来。楽観視はできない印象だ。