▼ 千葉や茨城に大きな爪痕を残した台風15号。私はたまたま東日本大震災の被災地を訪れる旅に出ていたので、その凄さを身を持っては知らないのだが、少なくともカーラジオから流れる報道は過ぎ去った跡は極めて呑気だったぞ。「台風一過で良い天気ですね!」と声をはず召させていた在京ラジオ局は一社や二社ではない。ましてやテレビにおいておや、だ。
▼ それが一日、また一日と時がすぎるに従って被害が大きくなってきたことを報道するようになってきた。しかも確証がないのか、手探りで。そりゃそうだ。停電しているのだから、リスナーからの電話やメールやFAXでの情報も入らない。自分で取材などの現場確認に行かない今の横着なマスメディアは、情報はリスナーや視聴者に頼っているのだから、現地の状況がわかるはずもない。お得意のツイッターで動画を流してくれる人たちもいなかっただろうし(誰が貴重なスマホの充電をそんなものに使い物か。そもそも携帯3キャリアの電波も死んでいたというのは東日本大震災並に悲惨な話だ)。
▼ 福島、名取、仙台、三陸へと車を走らせてカーラジオ(正確に言えばradikoのエリアフリー)を聞いていた私は、木更津にあるニッポン放送の100キロワット送信所の非常電源が一日で切れてしまい、足立の緊急用送信所1キロワットから電波を送るという状況を知り驚愕した。ワイドFMとかradikoとか色々とラジオ放送はやっているけど、そもそもワイドFMが聞ける受信機など持っている人間は稀だし、radikoは携帯電波が入らなければ聞けない。そこに1/100の出力しかない送信所からしか電波を送れなくなるというこの危機感のなさ、備えのなさは何なんだ。AM放送をやめてFM放送にしようという動きがあるようだが、短距離しか電波の届かないFM放送に切り替えたって災害時にはクソの役にも立たない。北朝鮮や中国からの放送でも聞けと言うのか。冗談じゃない。
▼ 被災した人が我慢と体力の限界に来た頃に始まったのが、お決まりの犯人探しだ。今回も犠牲者は東京電力。電力供給が滞っているのがけしからんと、こういうわけだ。んなこと言ったって、そもそも「台風一過の青空でーす」と喜んで放送していた君たちには責任はないのかね、ん?、ワイドショーの名司会者さんたちよ。つくづくこの国のマスメディアの劣化は目に余る。
▼ そんな状況の間、私の目は原発や津波の被害から必死に復興しようとしている土地の人々の姿を見ていた。これはとても力強いものだったので、また別の機会に。