▼ ここで何度か触れたzozoだが、創業社長の前澤さんが退任し、Yahoo!と資本提携した。会見を見たが、相いも変わらぬ具にも愚にもつかない質問ばかりで、参加しているプレスの人間のお里が知れる。多少の聴き応えがあったのは、TOBによる株式売却で株担保融資分を返済するのかと聞いた質問だったが、詰めが甘いことは否めない。

▼ それにしても、「負けた犬は叩け」だと、世間の非情さを思う。多少行き過ぎの発言ややり過ぎの行動があったにせよ、アパレル産業界が如何に在庫管理もロジスティックスもできておらず、旧態依然とした体制から抜け出していないことを証明したのがzozoではなかったか。zozoの真骨頂は在庫管理と物流体制であり、だからこそ株式公開会社で唯一のセレクトショップ ユナイテッドアローズがzozoを使うことで息を吹き替えしたのだ。日本のアパレル産業は、ファッションだ流行だと騒ぐが、結局のところは小島健輔さんが述べておられるように生産+輸入量の半分しか販売消化できず、残りは焼却するしか能のない「超反エコ」な業界だ。SDGsやESG投資している投資家はまさかアパレル株なんて持っていやしないだろうな?。

▼ 外形上は失敗したのだろうが、zozosuitはその意味で天才的、いや、悪魔的な発想だった。色々なことが重なって、わずか半年で辞めてしまったからアパレル業界は胸を撫でおろせたものの、もし前澤氏がzozosuitとスマートファクトリーの実験を10年間、赤字でも続けていたらアパレル産業界の2/3の企業は吹っ飛んでいただろう。それほどにサイズとそれに伴う在庫の合理化の効果は大きい。

▼ もちろん、前澤氏に落ち度がなかったとは言うまい。過去の株価の観点からzozotownのビジネスに限界が一旦見えたところでEXITする機会はあったし、その考えを捨ててzozosuitの夢にかけるならば、Amazonのようにキャッシュフローが出るならば赤字だっていいじゃないかとテッテイ的にzozosuitにかけるべきだった。クルマや美術や家のような派手な私生活の片鱗は見せて得にはならなかっただろうし、その意味で欲言えば純粋、悪く言えばあまりに無邪気だった側面は否定できない。

▼ しかし、だから何だというのだ。つまらぬ同調圧力の中で、ぬるま湯でゆでガエルになっていくことが処世術であるように感じるオトナコドモばかりの日本社会の中で、前澤zozoは大きな足跡を残した。それを誰もプレスで質問しなかった、それこそがメディアだってゆでガエルになっている証左じゃないかと画面の前でひとりごちるのだった。