▼ 妻との早朝ウォーキングは、近くの東工大のキャンパスがメイン。正面玄関の入り口近くにあるモダンな図書館の窓には、「祝・ノーベル賞 大隅栄誉教授」の紙が貼ってある。
▼ 一昨日、昨日とバタバタしていたので、遅まきながら受賞に関する報道や会見を拝見している。どのメディアでも言われているのが、「他人がどうであろうと独自研究を淡々とすること」の尊さと、「若者が地道な研究をやりたがらない中、将来の日本の基礎研究分野は大丈夫か」の心配。なるほど、と思う反面、そうかな?、と思う自分がいる。
▼ 大隅先生のような生き方を貫くには、強靭な精神力、もしくは信念、もしくは良い意味での鈍感さが必要だ。実際、先生が研究していた時代でもそれを貫くのに苦労していたことを「(研究室をはじめて持った)東大には感謝しているが、東大にいたままではこの研究はできなかったと思う」と仰っている。今回の研究が大きな成功を収めたのは、別の研究所に所属しておられる時に、他の研究者と協業できる環境があったからだそうだ。
▼ 日本の組織、企業だけではなく学究の世界においても先生のような生き方は排除されがちだ。多くのアイディアキラーが跋扈し、しかも彼らが企業では経営者や上席として、学究の世界では教授自治の名の下に、しばしば意思決定権をする中、独自性が「悪」と判断されることは少なくない。
▼ どんなに若者が独自の基礎研究をしようという志があっても、ヒトは一人では生きていくことはできない。生きていけなければ研究もできない。今回の受賞は喜ばしいことだが、実は「つまるところ人と組織」が鍵なんだと思い知らせてくれたという意味で、とても重いテーマを日本社会に突きつけているのだということに思いを馳せるべきだろう。もっとも、毎回ノーベル賞受賞の報を聞くたびに思うことなんですけどね。