▼ 大阪のイズミヤが好きだったので、アナリスト時代、通い詰めた。自分の最初の小売業界のレポートは和田満治さんお元気なりし頃のイズミヤだ。
▼ そんなイズミヤのIR担当者がインタビューの跡の雑談で「ありゃ、凄い会社ですわ」といつも話題になったのがジャスコだ。1990年代の半ばころだったろう。NDC(日本ダイナミックチェーン)の仲間でもあり、よくお互いを知っていらっしゃったからだろう。
▼ 何が凄いのですかと尋ねると、「ジャスコは大胆に潰しては、大胆に出す。あれはウチにはでけまへんわぁ」。当時、既に満治さんは急逝なさって、弟さんが後継社長をしている頃だったと記憶する。ジャスコは私の担当ではなかったので詳しくは知らなかったが、著名な証券アナリストが強い海推奨をしており、名前はよく知っていた。店舗を見に伺うと、確かに古いタイプの店をゴッソリ潰し、新しくて綺麗で潰すのにコストがかからない店を出す。レッドロブスターみたいな外食はやめ、買ったばかりのルームズツーゴーもやめ、でも業界で有力な企業にどんどん資本参加する。後年、これは実質的な創業者の岡田卓也さんの「大黒柱に車をつけよ」という家訓であることを知る。
▼ 1990-2000年代の株式市場にとって「イトーヨーカ堂かジャスコか?」は、流通業界に投資するうえでの最大の命題だった。サウスランドを買ったりと大胆なアクションもしつつ、伊藤オーナーお家芸のコツコツとした「カイゼン」でCVS事業で圧倒的差を付けるイトーヨーカ堂グループ。一方、「大黒柱に車をつけ」て、借入金や株式市場からの資金調達をテコに多くの事業モデルを作り出すジャスコ。アナリスト業界は真っ二つに割れた。
▼ あれから10年強。「大黒柱に車をつけ」て、朝令暮改であろうと変化対応をしているのがIYグループで、大胆に拡大はするけど、大胆に捨てることは忘れてしまって身動きがとれなくなっているイオングループ。一体何がどうなっているのだ?
▼ 断捨離は、「いらないものを捨てる」ことではなく、「大好きなものは何か」を選ぶ作業だという。そして「大好きじゃないものは一切捨てる、振り返らずに」。今のイオンに断捨離をする勇気はあるのか。なければ、どうなるかは1995後半~2000前半が証明している。