▼ まず僕の予想はあたらないことを断言する。そのことを知見ラボの中でも古い付き合いの吉岡、竹垣常務研究員はよくご存じのはずだ。だから、今日は予想しない。単純にファクトと感想だけを書く。

▼ どうも日本はまたもや「自虐」が好きな国になってきたようだ。中学生の頃くらいからずっと色々な日本論を読んできたが、日本人は日本がダメな国で遅れていて、どうしようもないということを言われるのが「好き」だ。だからこそ、エズラ・F・ヴォーゲル氏がジャパン・アズ・No.1を書いたときは嬉しい反面面はゆい気持ちが強かったことを覚えている。

▼ それがプラザ合意に始まる円高、資産高、内需景気を経て、一時的に「俺たちいけるかも」となったのだが、平成バブルの崩壊で一気にどん底に落ち、そこから這い上がれないところに、一時的に安倍政権下での戻りが来た。「もしやこのまま」と思ったのだが、コロナ禍とその対応の悪さで何度目かの「日本ダメダメ」論が大はやりだ。脱炭素ができていない、原子力発電の始末をどうつけるのか、少子高齢化、若年層問題を引き起こしている格差問題、コストプッシュインフレ、悪い円安、電気自動車シフトによる日本の根幹産業である自動車産業の凋落、etc…..。まさしくドラマの「日本沈没」状態だ。

▼ ただ、逆から見る発想も重要だ。コロナ禍はオミクロン株の感染で再び騒ぎ出しているが、少なくとも第5波の後から今に至る状況は極めて落ち着いている。それでもマスクを外さず、アルコール消毒をあちこちでする日本の公衆衛生概念は自慢できるモノだろう。多分、インフルエンザは今年も大流行とはならないように思う。これだけ予防措置をしているのだから。

▼ 脱炭素はどうだろう。前にも書いたが、脱炭素は地球温暖化を回避するためというのが世間的なお話だが、一方で世界で力を失いつつある欧州が環境を盾にリーダーシップを取ろうとしているということが根底にある。ただ、それにしても、ロシアからの天然ガスにEUのエネルギーが頼っている部分があり、ロシアと中近東の産油国、天然ガス埋蔵国がコントロール出来る中では、必ずしもこの優位性が欧州で続くとは言いがたい。米国駐在している自動車会社の方にお聞きすると、ESGなんて米国では全く意識されてませんねぇ、だそうだ。その彼がESGの担当者だから本当なのだろう。ESG、SDGs、サステナビリティが、人間は変わっていくべきだという素晴らしい理念に基づくモノではなく、単に抜きん出てやろうという国同士の闘いをポリティカルコレクトネスというオブラートでくるんでいるだけのような気がする。

▼ 中国は言うまでもなく状況が徐々に変わってきた。日本経済新聞が、先日の中央日報で鄧小平・胡錦濤・江沢民vs毛沢東・習近平での比較論争を始めていることを書いているが、確かに「ネズミを捕るのが良い猫」と行った現実経済路線の鄧小平を否定しているように見える習近平政権が、この好調な経済を維持できるかは疑問が残る。

▼ もちろん日本に問題がないなどとは言わない。国民総資産-国債発行額のネットの日本国としての資産は1000兆円を切ったし、一番エネルギッシュに動ける若い人材が自由に動けない日本の組織は問題だ。解決は容易ではない。しかし解決の前に、何が問題かを冷静に知る目が重要だろう。何か記事や発言すれば、それをネットで叩きまくる脊椎反応しかないようでは、どもこもならぬ。

▼ 「まだはもうなり、もうはまだなり」、株式市場の格言だ。「それ、ホント?」と考えることが今は求められているように思う。ドラマとしては面白いが、「日本沈没」と聞いて喜んでいてはダメなのだ。

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