▼ 仕事でフィンテックとブロックチェーンについて調べていてふと感じた。この日本という国が、イノベーションに対してもっと寛容で、将来を見通す力があったならば金子勇と堀江貴文が世界のIT業界を牛耳っていたのではないか、ということだ。
▼ 金子勇、42歳の時に心筋梗塞で逝去したまさしく天才IT研究者。そして逮捕歴あり。彼が2ちゃんねるのスレッドでの応援を背景に創り出したpeer-to-peer(P2P)のプログラムであるWinnyは、サーバーを介さずに各個人のPCを連携してファイル共有出来る夢のソフトを生み出した。
▼ P2Pは悪用すれば、個人のPCにある動画や音楽などの著作物を自由に見聞きすることができる。これが逮捕された理由だ。一方で、正しく応用すれば、衆人が監視する不正改竄不可能のシステムを生み出す。まさしくブロックチェーンは金子勇が最初に発想し、プログラムとして開発していた。しかし、それを日本の警察は著作権法違反という罪で逮捕し、そのことでP2Pへの技術開発に日本は大きく遅れを録る。
▼ フィンテック、ビットコイン、NFTと次々に活用されているブロックチェーン技術を具現化した人物をイノベーターとして讃えるのでは無く、逮捕する。なんとも日本らしい話ではないか。
▼ そして堀江貴文という天才に対しても想いを馳せる。ホリエモンと呼ばれ、金子と同じく逮捕歴があり、塀の向こうに入っていた彼は、塀の外に出てきたときは既に悪者と認識されていたし、何よりもITビジネスマンとして脂ののりきった時期を超えていた。なんともったいないコトであろう。
▼ もちろん逮捕されるには理由がある。しかし、その理由の一つの背景に大メディアの親会社子会社の時価総額のねじれを利用した買収戦略があったということに違和感を感じざるを得ない。たったそれだけのことで、金子勇と並んで天才の彼を失ったことで、日本は米国にGAFAM総てで先を越されたのだ。そして、今や金子勇の名前はブロックチェーンだ、ビットコインだと騒ぐ人々の殆どは知らないし、サーバーシステムによるクラウドコンピューティングやそれらの金融ほか多くの産業への展開を構想していた堀江貴文は「ホリエモン」という戯画化された存在になっている。なんともったいないコトだろう。
▼ 政治家や産業界の人間や学者はイノベーションイノベーションと騒ぐ。しかし、実際にイノベーションは異端であり、その異端を嫌い、既得権益を守るためにはイノベーションによる将来の国力増強をすててしまうのが日本なのだ。そう考えると悲しくて仕方ない。
▼ ちなみにブロックチェーンの構想を発表したサトシ・ナカモト氏は今なお正体不明の人物だ。そしてそれが金子勇であるという説は根強い。P2Pの実戦的応用という点で共通点は多い。ただサトシ・ナカモトが金子勇だとしても、別の人物だとしても、サトシ・ナカモト氏は姿を現さないのではないか。こんな日本で異端のイノベーションを開発すれば、下らぬ理由で潰されるだけだ。そう考えるとやはりさみしさだけが残る。