▼ 新年早々大笑いしてしまった。欧州委員会はESGのルールである「タクソノミー」の協議を行って、草案を発表した。そしてその中で、なんと原子力発電と天然ガスが「クリーンエネルギー」であると盛り込んだのだ。「ウッソー」と思わず叫んでしまった。
▼ 言うまでもなくエネルギー資源が乏しい日本では第二次大戦で原子力爆弾の被害を受けたにもかかわらず,原子力エネルギー政策は重要なものと位置づけられ、それに対する莫大な費用もかけられてきた。
▼ 残念ながら、技術者や電力会社、電源開発会社の怠慢か無能なのかわからないが、ことごとくトラブルが起き、一旦燃焼させたウランを回収し高速増殖炉で燃料の再利用をするはずだった「もんじゅ」も諦めざるを得なかったし、東海村でのずさんな被爆事故、あちこちで起こる細かな事故など原子力アレルギーを持つ日本国民を納得させることはできなかった。
▼ そしてとどめを刺したのが3.11東日本大震災の福島第一原発のメルトダウンであることは言うまでもない。このため、日本のベース電源は石化燃料による発電(特に石炭)に頼り続けるを得ず、おまけに自然再生エネルギーの要になるはずの太陽光発電は施設が予想以上に老朽化することに加え、環境破壊を巻き起こすことやそもそもの買い取り価格が低下したことから、いまは見る影もない。
▼ なんといっても原子力発電の最大の問題は原子力廃棄物をどう処理するかだろう。高速増殖炉がうまくいったとしても廃棄物は残り、それはどこかに捨てるしかない。地中に埋める、海中に埋める等色々な案が出たが行き当たりばったりのアイディアに過ぎない。
▼ そんな原子力発電が「クリーンエネルギー」とEUが決めたのだ。おいおい、フランスは確かに原子力発電大国でEU各国に電力を融通できるが、最終的な原子力廃棄物の処理ができるなどとは聞いていないぞ。おまけに天然ガスもクリーンエネルギー?。
▼ そりゃ確かに石炭や石油にくらべれば天然ガスを燃やして電力を得ることは相対的にはクリーンだ。排出量で言えば二酸化炭素は石炭100:石油80:天然ガス60、窒素酸化物は石炭100:石油70:天然ガス20-40、硫黄酸化物は石炭100:石油70:天然ガスゼロ、だ。
▼ しかしながら、今話題にしているクリーンエネルギーの議論は脱炭素であり、二酸化炭素排出量に着目しなければならない。石炭100に対して40%減らせるからクリーンです、はないだろうよ。これを「御都合主義」という。というのも欧州の特に北欧地区ではロシアからの天然ガスへ依存している。しかし、ロシアが中東と組んで脱炭素による石化燃料を使わないという欧州の決定にへそを曲げて石油を減産していることはご存じの通り。ついでに天然ガスもしめてやれということで価格が高騰している。
▼ 米国はこれを見て、「うちの天然ガスいかがっすかぁ~」と売り込みにかけているが、パイプラインの距離を考えればかなり時間がかかるだろう(もちろん船で運ぶという話はあるが)。
▼ いやいや話題を戻せば、要するに電気自動車がクリーンな移動手段で、みんな電気自動車に乗れ。石化燃料なんて二酸化炭素という恐ろしい温暖化ガスを出すから使うなというのは、欧州がリーダーシップをとりたいがためのタテマエでしかないのだ。それに世界もだんだん気づいてきている。そもそも電気自動車のバッテリーはどうするのだ。希少金属をどう回収するのか。多分回収するにはブロックチェーンを使ってどこにバッテリーが存在するかを正確に把握し、もう車の売切りは一切せず、リースで自動車会社が回収して再生するしかない。しかしだねぇ、産業廃棄物とかこうした処分処理場のビジネスというのはなかなかにタッチしにくい部分もあるのだよ。それを理解しているのかね。
▼ 記事によれば、欧州は天然ガスをクリーンエネルギー認定すると同時に水素の将来を研究するそうだ。おぉ、トヨタの出番ではないか。いいぞ、豊田社長頑張れ!、文藝春秋のインタビューはメッチャ面白かったぞ。
▼ 世界がこのままでは地球を汚し、壊してしまう可能性が高いことは、レイチェルカールソンが「沈黙の春」を書いたあたりから十二分に理解されていたことだ。しかし、それは政治や地政学的な優位性に使うためのものではない。人類みんなの将来にかんがえることなのだ。欧州は今回のクリーンエネルギー認定で見事にその考えの浅さの馬脚を示した。わたしにはそう思えてならない。頑張れ、日本の逆転チャンスだぞ。