昨今、ジョイントビジネスプラン(JBP)という言葉を耳にすることが多くなってきた。

JBPについては、USにおけるWal-MartとP&Gとの取り組みが有名であるが、実際にどのような取り組みであるのか、リテイラーの観点から少し論じてみたい。

■JBPとは

プロモーションや価格、リベートに偏重した従来型の商談スタイルから、 顧客視点でリテイラー、サプライヤー双方がビジネス課題を理解し、体系的、継続的にビジネス成長を図るための活動である

すなわち、短期的なアクションプラン策定だけではなく、中長期的なマーケット成長について、会社対会社の視点から協議し、双方Win-Winの形での実現を図ることを目標とする

取り組みを進めるにあたっては、以下のポイントに留意することが重要となる。

 ・リテイラー、サプライヤー相互の企業ビジョン、ビジネス戦略を理解し、双方の目標達成に向けた協業体制を構築する

 ・カスタマーインサイト等、マーケティング情報を、可能な限り共有することで、双方が認識する顧客情報の相互補完を図る

 ・特に双方の関心度が高く、フォーカスすべき共通分野、領域(Sweet Spot)を戦略的に捉え、相互成長を図ることが重要である。

■協業体制

協業体制としては、従来のバイヤーと営業担当者(点と点)の商談体制から、会社対会社(面と面)との体制として「ミラーチーム」を構築することが、ポイントとなる。

双方それぞれがエグゼクティブ以下、バイヤーリードのもと、専門部門間でダイレクトコミュニケーションを図ることで、コミュニケーションロスの低減、クイックなアクション体制を構築することが可能となる。

■JBPイニシアティブと数値計画策定

JBP取り組みにおいては、まず双方で戦略構想を構築し、確認することとなるが、リテイラー・サイドからみた場合の例として、以下のようなフレームからスタートすることも有効であると恩われる。

 ・マーケットシェアの拡大 :カスタマーインサイトの理解深耕により市場を上回る売上成長の実現

 ・プライスリーダーシップの獲得 :フォーカス商品を中心とした価格競争力の強化

 ・非効率なコストの削減 :サプライチェーンの効率化、IT/デジタルの活用

それぞれがJBPイニシアティブを確認した後に、数値計画策定となるが、リテイラー、サプライヤー双方の年度経営計画を鑑み、実際にJBP年度計画への落とし込みを行う。その上で特にエグゼクティブレベルでの合意を図ることが、取り組みを成功に導くために重要なポイントとなる。

なお、数値計画においては、リテイラーのPOS数値をメジャーメントとして、双方の共通言語化を図ることが望ましいと考える。 これにより双方同じ視点から、実際の取り組みについての検証、レビューを行う上での判断基準として明確化を図ることが容易となる。

具体的なKPIについては、主に以下のようなものが挙げられる。

‐ 売上高(全社、既存店)、仕入高、差益高、リベート/アローワンス、在高、在庫日数(DOH)、プライスポジション等

また、プロモーション・カレンダー、新商品、イノベーション情報等についても、可能な限り双方で共有することで計画精度を高めることも重要である。

■JBP年間ワークフロー

JBP年間フローにおけるキーマイルストーンは、一般的には次のように考えられる。

・イニシエイト  :

 リテイラー、サプライヤー協働にてJBP年間計画を策定。戦略、アクションプランを含め、エグゼクティブレベルを交えた上で、双方合意を図る。

・月次レビュー  :

 個別サプライヤーと数値実績、営業概況報告に基づき計画進捗を確認、都度COE(コレクション・オブ・エラー)を実施      *What is working, not working?

 JBPサプライヤー全体の進捗状況、見通しをもとに、課題、修正アクションについて各部門ミーティングを通じ協議、実施

・四半期レビュー :  

 月次レビュー同様に四半期レベルでの進捗確認を実施。クロスファンクション・チームからのフィードバックを含め、月次レビューと比較して、より俯瞰的、包括的な観点からレビュー、COEを実施。

・半期/年度レビュー (Top to Top Meeting): 

 年2回、JBPサプライヤーとのTop to Top Meetingを実施。  エグゼクティブメンバー参加の上で、当初計画の進捗状況、見通しをもとに、戦略方向性の再確認、修正アクションを含めた政策意思決定を行う。

・取引先集会 (Supplier Summit):      

 実績報告を含めた前年度の振り返り、並びに本年度主要政策説明等、CEOをはじめエグゼクティブメンバーより説明。併せて、貢献度の高い取引先の表彰(Supplier of the year)等、アワードを実施するケースも見受けられる。

■JBPモデル成功への鍵

JBPについては前述の通り、とりわけ難しいテクニックやナレッジを求める取り組みではなく、あくまでも日々行っている商取引を顧客視点に基づき、会社対会社の取り組みとして、より体系的、継続的に実施とすることがポイントとなる。

地道な活動ではあるが継続することにより、結果としてリテイラー、サプライヤー双方がWin-Winの形で成長を実感し、より強いパートナーシップの構築に繋がることとなる。

最後にJBPモデル成功への鍵として、以下の点に留意すべきと考える。

・双方のエグゼクティブレベルにおける戦略、数値計画の合意

・バイヤー、営業担当を中心として、ミラーチームレベルでの緊密なコミュニケーション

・判断基準における共通物差し(メジャーメント)の明確化 (Ex. リテイラーPOS数値)

・COE(コレクション・オブ・エラー)に基づく、迅速な修正のアクション実施                                                                                               (井本 幸一)

One thought on “ジョイントビジネスプラン(JBP)について”

  1. まずは、知見ラボさんのページにお邪魔すると井本さんの記事を拝読できるのだ、ということに感激。
    しかし、読み進めると、、
    「oh~、カタカナたくさんねー」と、日本語がおぼつかない外国人みたいな
    感想が頭に浮かびました。笑 (ビジネス用語に疎い自分が情けない)

    業界のこともよくわからず、営業経験も販売経験もない私ですが、
    人と人のつながりをベースに企業も社会も回っていく、
    裏を返せば、企業の成長も衰退も「人」次第だということを知っています。
    ウィンウィンという考え方にも大いに共感します。

    社員の不満や遺恨に気付けなくなる経営者は少なくないですが、
    双方の「橋渡し」ぐらいは、させて頂きたいところです。
    課題はおそらく”定着”でしょうか、、、。

    これからも、知見ラボさんを覗いてみたいと思います。
    よろしくお願いいたします。

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