《 震災後、初の東北 》
初春とは言え、まだまだ寒いあの日の大きな地震、津波、そして原子力発電所の事故。自分の頭の中にはいくつもの辛い画面が残っているというのに、もう5ヶ月弱が経とうとしている。
色々と偉そうなことを「余談」で書いていたが、ボクはあれから一度も東北に行くことができなかった。ボランティアとして役に立つわけでもなく、かといって物見遊山で行くなどはもってのほかであると考えながら、グズグズしているうちにこれだけの月日が経ってしまった。
テレビやネットを通して色々な画像は入ってくるけど、実際の自分の目で見た東北はどうなっているのだろう?。それだけがずっと気になっていた。
《 ここは渋谷ですか? 》
身の引き締まる思いをしながら、先週、ボクは東北新幹線の車中の中の人間となっていた。車窓から見える景色は、さすがに内陸を走っているだけに余り大きな変化は見えない。ところどころ、屋根瓦の修理のためのブルーシートが目立つくらい。宇都宮、郡山、福島、そして仙台。終着駅に着いた。
なんとなく後ろ暗い気持ちで改札を出た駅のホールで最初に目に飛び込んできたのが「仙台七夕」の大きな飾り付けだった。商店街にはもう少し後で飾られるそうだが、まずは観光客のためにも駅に飾り付けをしたそうだ。大きい、そして美しい。多くの家族連れが写真を笑いながら撮っている。中には外国語も混じっている。みんな楽しそうだ。本当にここはあの巨大地震が襲った街なのか?。ちょっと平衡感覚を失いそうになった。
そしてそれよりもさらに驚いたのは、駅からのペデストリアンデッキを渡り、昨年完成したPARCOさんに入ったときの若い女の子の多いこと!。バーゲン時期とは言え、これほどおしゃれな女の子がひっきりなしにエスカレーターを上っていくのをしばらくみたことがない。
一階に下りて、仙台自慢のアーケード街に入る。これまた人が多い。しかも、多くの人が何らかの店の紙袋をぶら下げている。冷やかしとか気晴らしで来ているのではなく、お金を使って買い物をしているのだ。経済が回り始めていることに心から安堵する。ボクもささやかながら、夜の飲み会にそなえて「ソルマック」なんぞをドラッグストアで買わせていただく。
この混みよう、人の出方、「ここは渋谷ですか?」と言いたくなるほどの賑わいだった。
《 急速な経済回復 》
日銀の定例会議でも発表があったように、東北地区での復興は関東に住んでいるボクが考えているよりも遙かに進んでいるようだ。土木、建設、機械産業、漁業、農業、その他。すべてが「なんとかせねば」と必死で回復させようとしている。加えて、遅い遅いと苦情の耐えなかった義援金や自治体からの金銭支援も回り始めているようだ。
関東以西にいると、地震や津波のことは忘れ去られて、原子力発電所のこととつまらぬ政治家どもの子供の喧嘩ばかりしか報道されていないが、おっとどっこい、東北ではしっかりと再生への道を歩み始めている。このことはきちんと理解しなければならないと痛み入った次第。
《 しぶとき国、日本 》
それにしても、この国はつくづくしぶとい国だと思う。地に足を付けて生きている人は我々が想像するよりも決して少なくない。いや、多いと言ってもいいだろう。そりゃ、沿岸部の倒壊したコンビニATMからお金を盗んだり、放射能問題で立ち入り禁止の中の家に入り込み貴金属を盗んだりする不逞の輩もいるけれど、他国と比べれば誤差の範囲だろう。
1995年の阪神大震災の時もそうであったが、この国というのはなかなかにしぶとく、ガッツのある国なのだなあと痛感しながら仙台からの新幹線に乗った。