《 「憚りながら」 》
情報洪水に流されないために新聞と経済雑誌の購読をやめてから二年半になります。時々不便なことはあるものの、重要なニュースは携帯電話やネットで内容を見ることができるため、ほとんど支障はなくなりました。
その分、週に1~2度、終業後にじっくりと大きな本屋さんをハシゴするようにしました。やはり書籍としてまとまったものは、内容が濃いですね。とはいえ、緊縮財政下の佐々木家では新刊本はそうそう買えません。ということで、まずはぱらぱらっと立ち読みして、翌週までその印象が残っているものは購読するということにいたしました。これは「ツンドク」が減るのと節約出来るという意味で一石二鳥となっています。
最近購読した中で印象深いのが「憚りながら」。山口組系後藤組の元組長だった後藤忠政さんの自叙伝です。後藤組は強烈な武闘派なのだそうですが、その方が引退をして得度をなさったというところの心境の変化に興味を持ちました。
《 筋を通す 》
本自体は、後藤さん(得度名:忠叡)の50時間に及ぶインタビューをライターがまとめてあるため、時系列の流れになっており、とても読みやすい本です。
加えて、興味深いのは所々に出てくる忠叡さんのつぶやきです。平易でわかりやすい言葉でありながら、激烈な人生の中から会得した人生訓だからでしょうか、自分の身に置き換えるとズシン、ズシンと響くような言葉が述べられています。
一個一個、それらの言葉をここに書くのは野暮ですし、著作権侵害ですから、それは購読してのお楽しみということにいたしましょう。
ただ、どの言葉にも根底に流れているのは「筋を通す」ということ。こういう稼業ですと東映映画の「仁義なき戦い」などから、「なんでもあり」というイメージを持ちがちですが、忠叡さんは色々なところで「筋が通っている」こと、「仁義を貫く」ことが最も重要であると述べています。
一部分だけ、それに関するところをご紹介すれば、ここ10年ほどの政治の動きに関しての部分に関するコメント。
「自分たちで選んだ親分(総裁)なのに、それが失敗した、支持率が落ちたと言っちゃあ、「俺はあのとき、実は反対だった」とか変な言い訳して、平気で悪口言って、引きずり下ろしていたわけだろ? 極道の世界じゃ、いったん親子の杯をを受けたからには、その親分に一生忠誠を尽くすというのが最低限の掟だ。(中略)自分が選んだ親分の悪口を言うぐらいなら、自分が自民党を辞めるか、議員を辞めるかしたらいいだけだ。それが嫌なら、四の五の言わず、じっと黙って我慢しろと言う話だ」
なるほど、これはもっともな話であります。宮仕えをしていながら、色々と文句を言ったりしがちな私にとっては反省しなければならないと思った言葉でした。無理が通れば道理が引っ込む、筋を通して生きるというのは何事によらず基本なのですね。
《 「今までの経験に無駄はない」 》
忠叡さんの本からは離れるのですが、ここ数ヶ月は色々なキャリアを積んだ方のお話をお聞きする機会が多くありました。中には「なんで俺はこんなことをさせられなければならないのか」というような納得できない異動や、処遇を受けた思い出話をお聞きすることも少なからずありました。
しかし、そうした方が最後におっしゃるのは「だけど、今までの経験で無駄になったことはひとつもない」ということです。そうした異動や処遇も含めて。これは見事に共通しています。どんなしんどい経験でも、納得いかない処遇でも、結果的にはそれが後の人生に生きたということを口になさいます。逆に言えば、そういう考え方を持っているからこそ、今なお、ご活躍されている方が多いと言うことでしょうか。
この「余談」では何度も何度も登場するApple社のスティーブ・ジョブズCEOの1995年スタンフォード大学卒業色でのスピーチですが、今なお私はしんどいことや辛いことがあった時に見返しております。「この道がどこかに繋がると信じて歩くこと自体が人生に差をもたらす」「Appleをクビになって、成功者としての重圧が初心者への気楽さに変わった」「自分を信じ、他人の人生を生きるようなことはしてはいけない」。何度見返しても、やはりイイですね。
スティーブ・ジョブスの伝説の卒業式か入学式のスピーチ 1-2
http://www.youtube.com/watch?v=DE8HrWmnLwA&feature=related
スティーブ・ジョブスの伝説の卒業式か入学式のスピーチ 3
http://www.youtube.com/watch?v=54pPcsDEc6M&feature=related
辛いことがあったときに「これも人生の試練なんだ」と日本的根性論で自分を納得させるのではなく、「これでまた新しい点(dot)を打つことができた」と軽やかに生きていく、そんなことができるといいですね。
今週はちと短めに。さぁ、大河ドラマをみなければ!。