《 客数が意外と落ちていない 》
 先週、決算説明会に参加した企業は総合小売業(スーパー、百貨店、コンビニなど)14社、専門小売業3社、外食2社、サービス1社の合計20社です。

 このうち中間決算の経常利益が増益、もしくは黒字化、もしくは赤字縮小というように「経常利益が向上」している企業は20社中19社です。つまり「経常利益が悪化」している企業はわずか1社しかありません。幅広いジャンルの企業から無作為に出た説明会でこうなのですから、第一週の報告ともあいまって「今中間期の業績は改善方向」と申し上げても良いでしょう。

 さて、その中で特に印象的だったのが、(1)販売管理費の削減と、(2)客数の回復です。販売管理費の減少がなければ、経常利益の改善を達成できなかった企業は17社です。つまり、売上高や原価率の改善によって「のみ」経常利益を改善させた会社は2社しかなく、他はすべて販売管理費の削減が利益改善と直結しています。これを受けての私の印象は、「良く削れるものがあったなあ。かなり無理な削り方をして、今後に禍根を残さないかな?」であります。

 一方、(2)はポジティブな意味で非常に興味のあるところです。20社の中で既存店客数前年比を公開しているところを集計すると、単純平均で△1.3%で、前期比横ばい~プラスになっている社数は7社です。この7社の業種はGMS(!)、コンビニ、食品スーパー、外食であり、ちなみに外食は2社ともがプラスです。

 参考までに客単価は20社中19社が前年比マイナスで単純平均は△1.4%これもある意味で驚きです。というのは昨年度の客単価単純平均は前年比△3%程度でしたから。

《 残存者利得再び? 》
 これらの数字と最近の事業会社の方や、自分自身の体験を照らし合わせて浮かぶ言葉が「残存者利得」です。ある総合小売業系の経営企画部の方は説明会が終わった後、「どうして業績が好調なんでしょう?」というササキの問いに、「何故かはわからないんですよねぇ。でも、確かに小規模の競合相手はどんどん潰れているし、その意味では残存者利得かなぁ。」

 実は先日、全く個人的な感想として「残存者利得」を感じることが増えています。それは「ファミレス」です。子供も大きくなり、ファミレスには全く行かなくなった昨今でしたが、逆に子供が完全に親離れして土日の休日は妻と過ごす時間が増えました。近くに散歩に行ったり、遠くに季節の花を見に行ったりした帰り、「何か食べて帰ろう」という時に意外と食べるところがないのです。妻は脂っこいものが苦手なので、必然的にそば、うどん、もしくは何でもあるファミレスを探します。それで3軒ほど、この一ヶ月でファミレスで昼食を食べたのです。

 驚いたのはどこも満入り盛況であること。そして店員の接客が格段に進化していること。最後にメニューに随分と進化が見られることです。で、これらの変化をもたらした理由は非常に単純ではないかと。「淘汰が進んで、絶対的な店舗数が減った」、これに尽きます。大手ファミレスの閉店数を考えると1/2とは言わないまでも、2/3、3/4程度にはなっています。だからこそ、有名牛丼チェーンがファミリー取り込みをするためのCMを打つのでしょう。

 私は北海道の産なので、牛丼というものになじみがありませんが、関東出身で小学生の時には既に牛丼を食べていたという人間に聞くと「牛丼屋に家族で行くことは考えられない。牛丼は一人で入って、じっくり今日の反省と共に食すものだ」と。まぁ、彼のひねくれた思い入れはどうでもいいのですが、「ファミリーで食べに行く」ところが減っているということに着目せねばなりません。

 とすると、第二週決算の好業績は「残存者利得」によるものかもしれません。

《 それとも単なる経費削減効果か? 》
 しかし、一方で、下期の業績予想は全ての企業が極めて「保守的」に発表しています。前上期-今上期の決算では大幅増益ですが、前下期-今下期の決算を計算すると減益の会社が殆どです。つまり、下期以降の業績に対しては極めて不安を持っているということです。

 その一番の理由は「販売管理費の削減」。もちろん下期も販売管理費削減には努力するが、それ以上に売上・売上総利益が落ち込む自体になったら、とても販売管理費削減ではカバーできないだろう。だから、下期は保守的に予算組みをするという組織決定をなさったようです。

 さて、果たして「残存者利得」が部分的にでも発生しているのか?。それとも、単に「経費削減」の効果が出ているだけなのか?。第二週の決算は、なかなかに深遠なテーマを残してくれたように思います。

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