中間決算の発表と説明会が本格化しました。先週はその第一週でしたので、その備忘録。
《 先週のまとめ:好調業績の割に不安を隠せず 》
先週、わたしが参加した説明会はスーパーストア、食品スーパー、衣料専門店などの小売業10社、クレジットカード業が2社、商業不動産事業会社が1社の合計13社でした。
細かい点では各々違っているのですが、大まかな共通点として、(1)客数の数字が改善していること、(2)業績企業改善企業が多いこと、(3)先行き不透明を語る経営者が多いこと、が挙げられます。
まず(1)ですが、既存店の客数前年同期比がプラスになっているところは13社中3社だけです。しかし、マイナス幅の縮小というレベルまで入れるとクレジットカード業を除くほぼ全社が改善しています。つまり、顧客数のダウンは底打ちした感じであると言えます。ただ、客単価は依然としてマイナスとなっているところが多く、そのマイナス幅も改善しているとハッキリ言えるほどの力強さではありません。むしろ、円高や所得の下落を背景にした「意図的な単価の引き下げ」を行っているところが多く、単価は下落基調にあります。その意味でのデフレ基調には変化がないと言えます。
次に(2)ですが、13社中9社が前年同期比増益もしくは黒字転換でした。その要因は様々ですが、共通点があるとすれば「経費削減」です。人員の削減と言った強攻策は採られていないので、非常に細かな部分での経費削減の積み重ねがこれを支えたようです。まだ経費削減の余地があったこと自体に私は正直なところ驚いております。ただ、現場で働いている方のモチベーションから考えると、これ以上の経費削減をすべきなのかどうなのかはわかりません。生き残りを目指すためには必要である一方、外部の人間が「もっとコストを下げてはどうか」ということをとても言える状況にはないと考えます。
興味深かったのはある企業の方が、「佐々木余談」で過去に触れた「卸売業の再編統合による残存者利益」を引き合いに、「もしかすると小売業も地域によっては残存者利得が出て来ているのかも知れない」と仰ったことです。確かに株式公開企業ではないためマスメディアの全国面では触れられることは殆どありませんが、中小の小売業や外食業の破綻や信用不安、支払いサイトの延長などは複数の情報源によれば毎週起こっているようであり、実際に市場からの撤退を余儀なくされている企業も一社や二社ではありません。エリアによっては競合相手の閉店や破綻、信用不安で、売上や仕入れ条件が予想以上に悪化せずに済んだ可能性もあります。
最後に(3)ですが、(1)(2)でわかるように中間期業績は予想以上に好調であった割には、先行きについて明るい見通しを話す経営者が少なかったように思います。かといって、真っ暗な将来を予想している方も必ずしも多くはない。表現するならば、「上期は予想よりもうまい具合に行ってほっとしているけど、下期にこの状況を延長して良いのだろうか?….」と迷っている経営者が多いという言い方がピッタリ来ます。つまり、「浮かれずに慎重に行こう」と思っていると。
ただごくわずか、2-3社ですが「二番底」の到来、あるいは「三番底」の到来まで言及した悲観的な見方を示した企業もあります。その主な要因としては、消費者の年間平均所得の10%近い下落と円高による輸出産業のさらなる打撃を挙げておられます。
これら(1)~(3)の共通点が、決算発表の第二週、第三週以降も共通点であり得るのかを注視して、またご報告したいと思います。
《「現地、現物、現実」 》
ある業績好調な小売業の決算説明会に参加した際、その経営者は先ほど(3)の解説で書いた「三番底」の可能性について言及されました。説明会の質疑応答では、この発言は業績が悪化したときのための防衛戦(事前の言い訳)なのか、それとも本気でそう思っているのかを聞くべく、何度も「今来期の見通しは?」という質問がなされました。そこでその経営者が仰った一言が、「まぁ、どうなるかは正直なところわかりません。わかりませんが、ウチのところの強みは、まぁ、『現地、現物、現実』をきちんと見てやっていこうということですから、それでダメだったらしょうがないかなと思っているんですけどね。」という発言。
この「現地、現物、現実」を見てダメだったら仕方ないべさ、諦めもつくべ、という発言はとても強い印象を残しました。逆に言えば、それほどのことを言えるだけ、「現地、現物、現実」にこだわっているということなのでしょう。
どうしても産業研究の立場ですと、「机上の空論」とか「正義の建前論」に傾きがち。しかし、「現地、現物、現実」なのですね。これはとても素晴らしい言葉を伺ったと先週の決算ウイーク第一週を終える事ができました。