《 明治維新から142年しか経っていないのですね 》
明日は終戦記念日。太平洋戦争から65年経ちました。で、実は明治維新で日本の近代化が始まってから、まだ142年なのですね。つまり、近代化わずか142-65=77年で日本は日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、そして太平洋戦争まで体験したということです。徳川幕府270年の歴史から考えれば、なんというスピードでしょう。とても不思議な気持ちになります。
どのくらい前でしたか、「ネズミの時間、ゾウの時間」という新書がベストセラーになったことがありました。うろ覚えですが、どんな動物の種でも心拍総数というのは一致していて、寿命が長い種と短い種がいるのは、一分当たりの心拍数、つまり心臓の鼓動の頻度によるのだという本だったと思います。
それを踏まえると、日本近代化が始まってわずか142年しか経っていないにもかかわらず、徳川時代に起こったことよりも遙かに多くのことを経験したように感じるのは、「時代の鼓動頻度」というものが上昇しているからなのかもしれません。そうすると、さらに頻度があがり、我々が予想するよりも遙かに早く、日本という国家は進化、もしくは滅亡していくのでしょうか。
《 なぜに今の政治にモヤモヤを感じるのか? 》
実際、日本のこの10年の政治変化を考えると、ついていくのがやっとだったというのが偽らざる感想です。結果的に政権交代が起こったのですが、しかし、昨年夏の衆議院選挙の時の熱狂は既に消え、非常に「モヤモヤ」した感じの疑問だけが残っているような感じです。そんな中で、先日、勤務先の大先輩が後輩にレクチャーをくださり、その中で、民主党政権が持つ矛盾点をまとめてくれました。
1.低い負担・高い補償・財政改善の矛盾
・ 税収36兆円、国債55兆円の国で、高い社会保障はもはや不可能。高い社会保障を求めるならば重い負担か、財政のさらなる悪化に向かうしかない。
・ 全ての国民に国が一律に最低所得を補償するならば、民間企業は家計支援をしなくなり、賃金は下がる。そうすると企業収益は回復し、法人税は増加する。しかし、雇用の絶対数を増やし、日本に企業をとどめるためには法人税率を下げなければならないので、法人税はさほど増えない。また、所得(除く最低保障)も減るので、所得税も減る。
・ となれば、消費税増税を引き上げるしかない。 よって菅首相と自民党の「消費税増税論」は極めてまっとうなことを言っているのだが、それは「無駄な経費の引き下げで消費税増税をしなくても済みます」と言った昨年のマニフェストと矛盾するところが、民主党にとっては痛いところ。
2.環境政策・企業の国際競争力の矛盾
・ CO2削減の国際公約と高速道路無料化(=ガソリン消費社会)、原子力発電所建設凍結というスタンスは完全に矛盾する。そしてそのことは公約したCO2削減目標が企業活動の制約を招く可能性がある。
・ 現在の最重要課題は雇用の増大であり、そのためには企業に日本にとどまって貰う、もしくは来て貰う必要がある。しかし、そのための法人減税、投資に対する優遇策などの政策は一切ない。また製造業のアジアシフトは雇用をさらに縮小させるので、非製造業で働きやすくするための制度改革が必要であるが、これも戦略がない。
・ 通貨では人民元は固定相場であり、韓国ウォンは新興国通貨として介入が容認されている。アジア経済共同体構想が浮上しているが、そのためには公正競争が原点であり、それは人民元と韓国ウォンの切り上げが必須。しかし、日本はこの公平性に言及していない。
3.地方行政の矛盾
・ 地方交付税調整後の国の税収35億円で債務610兆円。地方も税収50兆円で債務200兆円。つまり、中央政府には地方政府を援助する力はもはやない。
・ よって地方政府は自力再生を目指すべきで、具体的には観光、農林水産業、新エネルギー(太陽光パネルなど)といったもので達成しなければならない。農林漁業者への所得補償はフリーライダー(ただ乗り)を増やすだけであり、むしろ効率よく増産した農家などにより多くの報奨金を与えるべきである。
《 英雄の登場を望むのはやめましょう 》
上記の三つの矛盾、非常にわかりやすいと感じたのは身びいきでしょうか?。私としては「なるほど、これがモヤモヤの原因か!」と、かなりスッキリ感がありました。
最後に大先輩は二点のことを追加してくれました。(1)支払い能力がある高齢者には社会保障コストを支払って貰いたいというお願いをきちんとする一方で、若年世代の年金滞納者などの「逃げている」人間からも徴収するものは徴収して、世代間不公平を無くさなければならないということ、(2)上記の矛盾が解消されなければ、民主党政権はオリジナルマニフェストの抜本的見直しに追い込まれ、政治主義としての立脚基盤を失うリスクがあり、その場合、再び日本の政治は混迷に陥り、決定的なダメージを国家が被るだろうということ。
政権与党は腹を括って、嫌われても言うべきことは言い、進めることは進めるべきでしょう。一方、国民もマスメディアが垂れ流す中途半端なゴシップ政治ネタで感情的にならず、冷静な分析を見て、何をすべきか決めるべきでしょう。
これは個人的な感想ですが、政治家も官僚も大半の方は非常に真面目に志を持って日本の行く方向を考えているように思います。一部のロクでもない政治家や官僚の批判をしてストレス発散するのではなく、自分で考える頭の回転を求められているように思います。2010年のこの日本、坂本龍馬や勝海舟の役割をするのは国民自身なのですから。それこそが「維新の志士」と呼ばれた先達が望んだ民主主義国家であったはずです。