《 暗い話題ばかりなので趣向を変えて 》
いつも通り、業務を通じて感じたことを書こうとキーボードには向かったのですけど、天候不順で直近の売上が悪く、なおかつ先々週号でも触れた通り、手持ち資金が減少する中でメーカーも卸も銀行(特に地方銀行)も与信に慎重になる中、なかなか気乗りする話題がありません。
ということで本日は訪問中にお話しした、業務「以外」のことで、感心してくださったことを書かせて頂きます。
《 如何に私はおしゃべりになりしか? 》
私はおしゃべりです。これはお知り合いになってくださった万人が知るところなのですが、実はわたしは小学生、中学生、高校生、浪人までは非常に暗いオトコでした。小学生の時は完全ないじめられっ子で、中学生の時も校内合唱コンクールのクラスでの指揮者に選ばれても「お前ってつまんねぇ」と言われて誰も言うことを聞いてくれなかったとか、浪人時代は1980年代当時としては死滅していた挑発にし、テニスのヘアバンドをしてネルのシャツを着て暗い顔をして自宅浪人という世界というように、まぁ、見事に暗さを濃縮したオトコでした。
さて、そんな私が何故にこんなにおしゃべりになったかと言えば、高校時代に落語研究会に入っていたことと、大学四年間、学習塾の講師に打ち込んだことが大きかったと思います。落研ですと古典は当然やりますし、拙いながらも学校祭では大喜利をやったりします。ついでに遊びでバンドもやっていたので、「即興」というものには比較的慣れていました。また、学習塾では生意気盛りの中学生を出来る子から出来ない子まで教えるので、彼らをどうこちらに引きつけて話を聞かせるか、成績を上げるきっかけ作りをするのかということは毎日真剣に考えていました。
今思えば、これらの経験が今の即興でペラペラとしゃべる自分を創り上げたと思っています。
《 お喋りは必ずしもウケナイ 》
ところが、必ずしもいいことばかりではありません。お互い知っている者同士であれば私のこういうキャラクターをご存じ頂いているので話しやすいのですが、最近は初対面の方とお会いすることが多くなりました。しかも、レポート書きのアナリスト時代と違って、いきなりCEOとかCOOとかチェアマンにお会いすることも少なくはありません。これで相手が喜んでくれるような話が出来ればよいのですが、所詮はチンピラアナリスト。特に、本当に初めての業界で、しかも気むずかしいと有名な創業者会長にお会いして今後の事業動向をどう考えるかというコンサルをする時は本当に悩みました。
で、そういう時には私には素晴らしい知人がいて、まず彼に相談します。彼は某大学の経済商学系の教授なのですが、元々はメーカー→留学→人事組織コンサル→外資系金融機関人事部長というビジネス上のバックグラウンドがあるため、非常に的確なアドバイスをくださいます。専攻も人事論、組織論ですので、私以上に「どうやって本音を聞き出し、組織を活性化させるか」というのが彼のスキルですから、本当に思いも付かないことを助言してくれます。
《 「わたしはしゃべり過ぎ」 》
その時も彼の研究室を訪れて、世間話をした後、すぐにコレコレコウナンダと悩み相談をしました。そうしたら、かえってきた一言が凄かった。ショックを受けました。「あなたはしゃべりすぎなんですよ」。
しゃべり(北海道弁ではぺしゃり)で生きてきた自分にとっては自己否定につながりかねないことだったので、驚いてさらにお話しを聞いたら、こういうことでした。
・ ビジネスの創業者は大変な苦労をして会社を立ち上げ、今も経営している。わたしが考えていることくらいとっくにお見通しである可能性が高い。
・ 特に今後の事業の方向性なんかは、一日中考えているだろう。とすれば、わたしが幾ら口角泡飛ばして話しても、何の役にも立たないだろう。
・ 創業者とか経営者が意外とわかっていないのは、自分が何が重要なんだと考えているかということ。つまり、アイディアが次から次から浮かんできて、色々なヒトから色々なことを言われるので、頭の中の整理が出来ていない。それを整理してあげる方がはるかに付加価値がある。
・ そのためにはわたしがしゃべってはいけないのであって、とにかく質問の投げかけをして、経営者に話をして貰って、それをわたしが分類してまとめてから、「こういうことですね?」と投げ返してあげること。これが一番、役に立つ。
《 ヒトは自分にしか興味がない 》
ショックでしたねぇ。そしてなるほどなあと思いました。で、彼はこう付け加えました。
「ヒトは自分のこと、自分にしか興味がないんですよ。特に経営者はそう。経営者=企業=従業員の生活なんですから。だから、一番大事なことは聞くことなんです。」
「ところが、ヒトは自分にしか興味がないのは聞き手も同じだから、ついついしゃべっちゃう。で、ビジネス本で『上手な話の聞き方』なんていうのが売れる。コーチングもそう。」
「コーチングができるヒトというのは特別な才能があって、ヒトの話を聞くことが苦にならないんです。だから、何時間でも聞けちゃう。その才能にコーチングのフィーというのは払われるモンなんですよ。だから一般の人が本を読んでコーチングを出来るようにはならないんです。」
この日以来、わたしは変わりました…..と言えればいいのですが、殆ど変わっていません(笑)。人間そんなに簡単に変われるのはドラマの中だけです。「じっと聞く」のは才能ですから、才能はそうそう身には付かない。相変わらずぺしゃってばかりいます。ただ、「今日はしゃべり過ぎてしまった。。。。」と自己嫌悪した時の反省材料にはなっています。
「ヒトは自分にしか興味がない」、わかっているようでわかっていないこういう本質を見抜くからこそ、彼は人気教授なのだなあと痛感しました。どうでしょうか?、皆様はヒトの話をきいているでしょうか?