《 決算発表シーズン突入 》
 消費産業の本決算(中間決算)が先週からは本格化しました。これは4月初旬から5月中旬まで約6-7週間続きます。その間に経済環境なども変わり、実績決算数値の内容や新年度の予想数値と現在の経済状況に乖離が起こったりいたします。このあたりを追っていくと、今年の前哨戦の雰囲気がわかりますので、これから2-3度にわけてこの4-5月決算発表報告を致します。

《 業態別既存店増収率と粗利益率動向 》
 増減収や増減益といった数値はいくらでも企業IRのホームページで確認できますので、会社によっては説明会でしか開示されない既存店増収率と粗利益率の状況をご報告します。なお、社名の代わりに業態名だけ書くことをお許し下さい。

1..百貨店 既存店△8.4%、粗利益率25.8%(前期比△0.8%)
2..百貨店 既存店N.A.、粗利益率26.24%(前期比△0.49%)

3.GMS 既存店△9.7%(客数△4.5%、客単価△5.5%、買上点数+2.7%、一品単価△8.0%)、粗利益率26.5%(前期比+0.7%)
4.GMS 既存店△5.9%(客数△2.9%、客単価△3.1%、買上点数+1.2%、一品単価△4.2%)、粗利益率24.3%(前期比△0.2%)
5.GMS 既存店△4.5%(客数△0.5%、客単価△4.0%、買上点数+0.9%、一品単価△5.4%)、粗利益率27.7%(前期比△0.5%)
6.GMS 既存店△5.7%、粗利益率29.0%(前期比△0.8%)

7.CVS 既存店△5.7%(客数△2.9%、客単価△2.7%)、粗利益率27.9%(前期比△0.3%)
8.CVS 既存店△2.1%、粗利益率30.3%(前期比+0.1%)
9.CVS 既存店△2.4%(客数+0.3%、客単価△2%)、粗利益率28.4%(前期比△0.44%)

10.SM 既存店△4.4%(客数△2%、客単価△2.5%)、粗利益率25.6%(前期比△0.2%)
11.SM 既存店△5.2%(客数△0.8%、客数△4.4%)、粗利益率27.0%(前期比△0.1%)
12.SM 既存店△5.4%(客数△4.4%、客単価△1.0%、買上点数+1.6%、一品単価△2.6%)、粗利益率23.5%(前期比0.3%)
13.SM 既存店△3.7%、粗利益率26.7%(前期比△0.3%)

14.HC 既存店△4.1%(客数△3.0%、客単価△3.0%)、粗利益率32.6%(前期比+0.4%)
15.HC 既存店△5.8%(客数△6.6%、客単価△2.4%)、粗利益率N.A.

16.専門店 既存店+3.0%、粗利益率35.9%(前期比△2.4%)
17.専門店 既存店+13.1%(客数+11.7%、客単価+1.3%)、粗利益率52.3%(前期比+2.5%)

18.外食 既存店N.A.、粗利益率61.7%(前期比△0.3%)
19.外食 既存店+11.7%(客数+5.8%、客単価+0.9%)、粗利益率67.4%(前期比+3.2%)

《 単価政策は客数には効果がない? 》
 特色をまとめると、(1)既存店増収率は殆どがマイナスであること、(2)既存店マイナスの要因が客単価下落だけではなく客数減少とダブルで来ているところが多いこと、(3)粗利益率の前期比は総じてマイナスだがばらつきがあること、(4)GMSの買上点数は全て増加していること、(5)好調企業は客数・客単価・粗利益率トリプルで上昇していること、です。これは非常に興味深い結果です。

 まず(2)は、「低単価政策では客数をカバーできず、結果的に減益の傷口を広げている」と言えることです。単価を「下げた」のか、「下がった」のかまでは読み取れませんが、少なくとも単価を下げて客を呼ぶという施策は効力がなかったという仮説が成り立ちます。

 次に(4)です。GMSに限って言えば、(2)で出した仮説は成立する一方で、低単価政策をとることでカゴに入れる点数はどの企業も増えているということです。SMの12番でも同じ傾向が出ていますから、(2)の仮説はこう言い換えられそうです→「低単価政策は買上点数の上昇には寄与したが、それ以上に一品単価が下落したことで客単価は低下した。そしてその客単価低下を客数で取り戻すことはできなかった。」

《 少しずつ匂いの変化に気づいてきた経営者 》
 このメールメッセージはなるべく数字を使わずシンプルに書こうという方針に基づいていますので、新年度の各社予想値までは書くのは差し控えます。ただ、総じて、(1)既存店増収率はマイナス継続、(2)粗利益率は改善、という方向性で予算を作っているところが多いようです。これは「買上数量が増加していることから、ベンダーとの交渉条件は少なくとも改善される」と考えているのでしょうか、それとも「客数の増加に寄与しない一品単価の引き下げを限定していこう」と考えているのでしょうか?。

 決算説明会での各経営者のコメントをお聞きしている限りでは、どちらかというと足下の既存店増収率の底打ち感を捉えて、低単価に振りすぎた反省を述べている方が多いように感じられました。そしてまた予算を作った1月、2月頃よりも雰囲気が変わってきているということを仰る方も多いように感じます。

 となると先週のメールメッセージでお伝えしたように、この一年間の過度な低価格による消耗戦は、「洗濯消費」とか「MD改革」、「在庫の適正管理」という方向に向かっていくような気がいたします。

 今回のタイトルの「匂いが変わってきた?」とは、その意味であります(決算発表で忙しく靴下を変えていないという意味ではありません(笑))。アナリストという商売を長くした生でしょうか、確証は全くないのですが、なんとなく雰囲気が変わってくることには敏感になりました。それを自分では「匂い」と表現しているのですが、その「匂い」を今回は感じるのです。高いものが売れるようになるとか、景気が反転するとか、そんなだいそれたものではないのですが、18円の豆腐、38円の納豆は確かに安いけど、それを買うシチュエーションと、それを買わないシチュエーションを上手に顧客が見分けるようになってきているのではないか、そんな「予感」がするのであります。

 この予感が果たして強まるのか、弱まるのか、来週の決算発表が楽しみです。

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