〔新店が出しにくくなった?〕
この難しい環境の中で、積極的な出店を行おうという小売業、外食業は多くはありません。坪効率の低下が顕著で、なおかつ、手元資金の温存を考えざるを得ない状況では、焦って出店をする必要はないというのがホンネです。しかし一方で、(1)回転差資金拡充が資金繰り確保において重要項目であること、(2)商圏変化対応にスクラップ&ビルドは必要条件であること、(3)人材育成の観点、から、一定レベルの出店は必要です。ですから、出店に対する考え方、計画、といったことをお聞きしておくのは私にとって重要なことです。
この出店環境に対する認識が、ここ数ヶ月くらいで若干変わってきた印象を受けます。それは端的に言ってしまえば、「店が出しにくくなった」ということです。しかも、東名阪の都心立地ではなく、いわゆる郊外・地方立地と呼ばれるところでの出店難化の声をちらほらと聞くようになりました。これは少なくとも僕の記憶では、2000年の大店立地法導入以降、覚えがありません。
〔遅れてきた街作り三法の影響か〕
この出店難化の要因は、どうやら「農地転用が難しくなってきたこと」が大きな要因のようです。とはいえ、工業団地であるとか、幹線道路沿いといったところでは特に出店が難しくなったという話はなく、むしろ同業他社の退店などもあって好条件の立地が提供されるようになってきたという声が依然として強い。一方で、大きい面積を確保するための農地転用では話がまとまりづらくなっているらしい。地主さんにとって、この時期に転用して商業施設を建てましょうという話は決して悪くないはずですから、自治体を含む当局の認可が下りにくいということが原因であるようです。
では、なぜ認可が下りにくいのか?。ここからは推察に過ぎませんが、考えられるのは(1)民主党政権になったことによる役所の許認可の一時停止、(2)街作り三法の影響、(3)農業関連団体からの何らかの力学、ということでしょうか。しかしながら、(1)と(3)はちょっとゴシップマスコミ的な話に偏っている感じです。私としては素直に(2)の影響なのかしらん、と思っております。2007年11月から街作り三法が施行されて二年、あまり表だった影響は無かったというのが私の印象です。青森市やいくつかの地方都市では市街地への集積を謳っていたものの、あまり全国的な動きではなかった。でも、当時の積み残し開発案件がほぼほぼ終了した二年目である今年、その影響が新規出店案件には出てきているということではないでしょうか。
〔SCの空床の方が深刻な印象〕
で、これによるビジネス面でのインプリケーションですが、プラスとマイナスの正反対の予測ができます。プラスは、「これにより郊外・地方の巨大出店は難しくなり、競合のさらなる激化に怯えなくてすみそうだ」という考え方。マイナスは、「出店だけではなく、既出店物件に対しても様々な面での規制がかかる可能性が現実味を帯びてきた」というもの。はたしてどちらなのか。もしかすると、双方なのか。ここらへんは注意深く見守るしかなさそうです。
ただ、開発に関して言えば、個人的に気になるのはむしろ、四国、北陸、東北、東海を見て共通して感じた「ショッピングセンターの空床の増加」です。地域一番の大きさや新しさを誇るSCは空床が全くない状況ですが、二番手以下は一気に空床が増えているように思います。特に厳しいのは、アパレルカジュアルのテナントと外食テナント。いずれも売上原価が低くて、粗利益率の高いという点で共通しております。逆にいえば、人件費&物件費の負担が相対的に重く、回転=売上が悪化すれば一気に損益分岐点が上がる業態です。現在のビジネス環境を如実に反映しています。
またSC見学で目立ってきたのがサブ核テナントとしての百円均一店の入店です。百均は核テナントであるGMSのハードライン雑貨系と完全競合しますから、それを覚悟でSCへの入店を増やすこと、テナント収入を増やすことをせねばならない現況の厳しさを示しています。ましてやここに「g.u.」などが導入された日にゃ、ハードライン雑貨系とソフトラインカジュアルの売場を破壊してしまいます。「テナントリーシング栄えて、GMS滅びる」ということになることを心配してしまう…..というのは言い過ぎでしょうか。