< 百貨店 >
 2月決算の流通業中間決算のヤマを超えましたので、ざっくりとしたまとめをしてみます。一言で言えば、「百貨店は赤字化踏みとどまり、GMSは赤字化、CVSは各社各様、SMは息切れ、専門店は一部気を吐き、外食はほぼ全滅」というところです。
 
 百貨店はほぼ-10%という昨年対比にもかかわらず、相当なるコストダウン(ベンダーへの厳しいプレッシャー?)のおかげで、ギリギリで赤字転落を踏みとどまったところが多かったように思います。中には上方修正もあり、「ええっ?!」と驚かされたのもこの業態です。
 
 ただ、地方百貨店の厳しさは生半可ではなく、年末商戦に向けてシビアな状況が予想されます。中央、地方問わずにセールの前倒しは常態化し、シーズナリティを鮮明に打ち出すという戦略はもはや過去の感になった印象があります。
 
 
< スーパー、コンビニ系 >  
 GMSは予想していたとはいえ、(1)-5%強の既存店昨年対比と(2)価格対応による粗利益率の低迷で、ついにというか、とうとうというか赤字化してしまいました。衣料品が厳しいのは既に見えていましたが、後述のSMでも述べるようにフーズラインが「キャッシュを回す」以上の役割を果たせなくなりつつあることが将来を不透明にしています。各社ともに大型投資は控えて、減価償却だけが淡々と過ぎている状態なので、まだこれで住んでいるのかもしれません。
 
 CVSはタスポ反動という明確なネガティブ要因があったため、一概にこの決算を悪いとは言いにくい部分があります。「低価格志向」は流通業の常識と言うよりは社会の常識になっていますけれど、一番低価格志向に弱そうなCVSの客数が昨年対比でプラスになっているところにはハッとします。この厳しい局面でも、顧客を刺激しようと商品開発に熱心なのはCVSであるというのは言い過ぎでしょうか。
 
 SMは当たり前ですがキャッシュが回りますので、一番安泰に見えます。しかしながら、フリーキャッシュフローでも減損部分を調整するとかなり資金回転が鈍っていたり、財務キャッシュフローでかなり重いリファイナンスができたからこそ回っているという企業もチラホラあります。「食品を扱っているから相対的に他業態に比べて楽勝」とは言いにくくなってきました。
 
 
< 専門店 >
 専門店という括りはエリアが広すぎて適当なたとえではないかもしれません。

 しかし、しつなこらげにネチネチと飽きずにサプライチェーンの構築をやってきたところはソフトラインであろうとハードラインであろうと稼いでいます。逆の言い方をすれば、そういう企業があるからこそ、ちょろちょろと戦略を二転三転させる大手総合小売が苦しんでいると言えるでしょう。

 「変化対応」は良いのですが、単に何をすべきかを固めることができず、あっちへこっちへとやり方を変えていては、お金と時間を失うだけのように思えます。稼いでいる専門店のやっていることは実は10年以上、何も変わっていないのです。「変化対応」を錦の御旗にしているけど、単に心変わりの激しい経営をしているだけという企業が多いように思います。
 
 外食は小売業の様にシェア取り競争をしているというよりは、マーケット自体の縮小の中で非常に辛い思いをしています。可哀想、といったら情緒的すぎるでしょうか。やはり外食はハレの消費であるため、こうした節制局面では企業の責任を超えた難しさがあります。一部の低価格業態が勝ち組であるとマスコミに取り上げられていますが、それらの業態の経営者も毎日生きた心地がしないのではないでしょうか。ただ、一時期の人的資源や立地の調達困難が嘘のようになくなっているわけで、コスト面では明らかに楽になっています。
  
 
< ネガティブ予測だけで良いのか >
 これらを総合して感じるのは、「我が社は何がしたいか?」を冷静に考えないと流されてしまうということです。専門店の項で書きましたが、「変化対応」といいながら、単に成功している他社の上っ面をなぞってバタバタしているだけという企業が散見されます。キャッシュが回転差資金で十二分に回って、既存店昨対も横ばい~微減くらいである時代ならばそれでもよいのですが、こうした局面では従業員、現場が疲弊するだけです。穴を掘って、穴を埋めろと言う拷問みたいなもので、「おいおい、また違うことやるのかよー」と現場の宮仕えのスタッフは嘆きたくもなるでしょう。
 
 ただ一方で、ポジティブな期待もないわけではありません。リーマンが破綻したのは2008年の9月15日ですが、実際に消費が減速したのは12月からです。よく覚えているのですが、10月、11月は「だからアングロサクソンはダメなんだよね-」という感じで、世間はのんびりしていました。派遣切りも実際に稼働率が落ちたからと言うよりも、雇用整理を一旦したいとずっと思っていた企業が、リーマンショックを良い口実に一気に始めたという感じだったように記憶します。ということで、昨対のゲタが高いのは11月くらいまで続きます。もしかすると、万が一ですが、12月年末~1月からは発射台が極端に低くなるため、昨対の数値が下げ止まるかもしれません。
 
 逆説的な議論ですが、どうも今の世論は余りにも極論に振りすぎているように思います。消費高齢化の人口論や格差拡大といった社会構造論は正しいのですが、そうした長期的な構造問題を短期的な循環の理由にすり替えて過ちだったケースは過去にたくさんあります。資本主義である以上、バブルの生成と崩壊は必ず繰り返すわけで、そういう循環的なものがあるからこそ経済のダイナミズムは存在します。バブルが弾けて死屍累々たる状況を見ながら、密かに次のバブルを楽しんでいる層は絶対にいるわけで、そういう観点では冷静な目が必要ではないでしょうか?。

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