▼ 最近、どうにも違和感がある言葉が「百年に一度」だ。世界を変えてしまった感染症の新型コロナウイルスに「百年に一度」という言葉を使うのはよく分かる。なんと言ったって、人と人と接触してはいけないがためにオンラインやリモートでコミュニケーションする手段が半ば強制的に当たり前の手段となったし、接触を避ける徹底さはカードやQRコード決済など、多くの生活様式を変えた。

▼ そういえば、2008年のリーマンショックも「百年に一度」と言われていたなあ。しかし、今考えれば明治41年。フォードのモデルTが量産され始めた頃だから、まぁ、ギリギリ百年に一度か。ただ、世界的な大不況と言えば1929年の世界恐慌だから百年に一度と言うにはちと近すぎる。

▼ ところが今やメディアを見れば、何もかも百年に一度、だ。先日笑ったのは、芸能人が食レポをしている中で「女将さん、これは百年に一度の味ですよ」と褒め称えていたこと。お前さん、百歳をこえていたのかい。そもそもそんなに旨いものを常時くっているのかい、と嫌味も言いたくなる。「百年に一度」も軽くなったものだ。こうして言葉って「消費」されしまうんだなあ。

▼ さて話は戻ってコロナ禍。この一年強のやるせなさ、当局の無策さ、そして私達自身の心と体のバランスと生活への影響は大きかった。しかしながら、何とはなしに収束が急速に近づいているような気がしてならない。

▼ 背景はやはりワクチン接種の予想以上のスピードだろう。まぁ、この一年間の現政権は叩かれまくったし、無能だ無能だと連日批判されてきた。といっても、それを弁護する気も私にはないのだけど。ただ、永遠に悪いままと言うことはないわけで、いよいよワクチンが高齢者向けに接種が五月に始まってから、その速度は予想を超えているように感じる。もちろん住んでいる場所や自治体によって状況は大きく違うのだが、高齢者で一回目のワクチン接種は都道府県別の人口による加重平均をとらないで単純に計算すると中央値17%くらい、平均は14%だ。しかも5/1段階では約300万人が5/31では980万人と一日20万人ずつ接種している。65歳以上の人口は3600万人だから、このペースならば単純に130日間かかることになるが、今は一日50万回接種できるし、大規模接種会場設置や地方では余ったり二回目を接種しているところがでてることや、何よりも習熟度が増していることから、当局は7月上旬には一回目接種は終了すると言っている。

▼ 二回目はさらに習熟度が増すと予想すれば5-7月の二ヶ月かかったものは一ヶ月かからないだろう。つまりは7月上旬以降はそれ以下の年齢や持病を持っている人間への接種となる。変異型云々の影響は予想できないが、ザックリいって、年内にはワクチン接種はかなり進むだろう。東京五輪がどうなるかはわからないまでも、「ここから沈静化に向かう」可能性は高い。

▼ 今日ラジオに電話コメントで参加して「緊急事態宣言延長の影響は」とか「失業率は」とか、まぁネガティブ方面のことを聞かれたのだけど、ホンネはこれからはこれまで業績好調だった産業企業の足踏みと、逆に不調だったところの改善という逆転現象に注目すべきだろう。「K字回復」という言葉についても聞かれたが、景気循環の屈曲点ではプラスのところ、マイナスのところが二極化するのは当然。それを勝ち組、負け組を拙速に記事を書いて恥をかいた経済雑誌は過去にゴマンとある。

▼ 特に逆転現象が気になるのは、金融周りだろう。銀行に出向している友人が最近嘆くのは「もう何を言っても、間に合ってます、と借り手がいなくなっていること」だそうだ。債権回収がキツくなることを心配していたが、そこまで事態はまだ深刻化していないようだ。しかも、金融市場は為替が正常化することが金利に影響し、徐々に金利で稼ぐという状態に戻りつつある。ということは、この一年間のカネ余り、異常な過剰流動性による資産価格の上昇は止まると言うことでもある。イーロン・マスクがビットコインでテスラを購入することを停止した途端にビットコインが暴落したのはその良い例示ではないか。

▼ その意味では一年間、耐えて、耐えて、旅行も買い物もレジャーも我慢してきて、でもその分家計貯蓄が残っている個人消費はどこかで爆発的に伸びるのかもしれない。ラジオで何か面白いことを言えというので「買っちゃえ消費だ」と話した。日産自動車で矢沢永吉さんがやっているCMがヒントなのだが、コロナが収束して行動緩和がされたら、ガマン消費が一気にはじける可能性はある。インバウンド無しに日本人だけでホテルは満杯になるかもしれない。多少希望的願望を入れているが、あり得る話だ。

▼ ただ、である。この一年の過剰流動性は各国がコロナ対策でばらまいた金のおかげだ。そのカネの運用先がなくなって株式や不動産、仮想通貨や金融商品に流れ込んだから、みんな値上がり益=キャピタルゲインが得られた。しかし、これからはこのばらまいた金を回収せねばならならぬ。景気急回復で税収が上がれば美しいが、残念ながら多分、そうはならないだろう。となると税率引き上げか税制改正か。実は「買っちゃえ消費」を楽しめる期間はごく短いかもしれない。

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